シルクのズボンは寿命が短い
シルクは極細繊維の集合体
古くから絹の着物はおしとやかに着こなしなさいと言われていました。それは、立居振舞いのアドバイスばかりではなく、乱暴に着用すると白く毛羽立ってしまうことを防ぐ生活の知恵でもありました。シルクの繊維は極細繊維の集合体でできています。ですから、強い力がかかることによって繊維がバラバラになりやすいのです。これを専門的にはシルクのフィプリル(分繊)化といいます。
シルクのズボンやスカ―トの寿命は短い
シルクの性質から考えると、衣服の中でも最もハ―ドな機能が要求されるズボンにとって不適当な素材であることは明らかです。かなり強度のあるデ二ムのジーンズでさえも、お尻や膝の部分が薄くなったり破れたりするわけですから、シルクでは、数回の着用でも問題があるといえます。
和服はおしとやかに着てください
和服を着たときも、ボディコンの時でも同じように活発に歩いたり、動いたりしてしまうことはありませんか？
そのたびに、和服はいたんでしまっているのです。
内股で歩くというのは衣生活の知恵
和服を着た時、おばあちゃんに「外股であるいちゃだめよ」と言われても、お行儀のことだと考えてはいませんでしたか。足を内股にして歩けば、前もはだけず着崩れないだけでなく、泥はねが上がっても外に散りますから、裾を汚す心配もないのです。
雨の日はカカトから先につけ振り袖の袂は腕に掛けて
洋装のときは爪先に重心がかかりますが、草履でこの歩き方では、ぱたぱたとカカトが離れて泥跳ねしやすくなります。カカトにぴったりと草履が付くように心がけましょう。また、振り袖の袂は腕に掛けておきましょう。
編物と織物は違います
生地の構造には、大きく分けて「織物」「編物」「不織布」があります。ふんわりとあたたかで、体の動きに合わせて伸び縮みするセ―タ―は、編物の代表格です。また、ちよっとドレッシーなアンサンブルやワンビースの生地として使われる二ットもまた編物です。
編物は１本の糸でできるということ
タテ・ヨコ別な糸で織つた織物と違って、１本の糸によって編み上げられたニット製品は、どんな小さな傷であっても、着ている時の動作や、クリー二ングなどの力によって、大きくほつれながら広がっていきます。
引っかけの傷が起こりやすい
編物は伸縮しやすい構造から、織物よりも糸が引っかかりやすくなっています。ハンドパツグなどの金具や、アクセサリーなどに十分気を付けて下さい。また、購入時には縫い代やボタンホールなどの部分を入念にチエックしましよう。
アセテート製品着用時のご注意
アセテート製品は、日常の身の回りにある薬品によって、溶けてしまうなどの影響が出やすいので注意しましょう。
除光液が衣服につくと溶けてしまいます
最も強い作用のあるのが、マニキュアを取るための除光液です。これが、アセテート製品に付くと溶けて穴が明いてしまったり、硬化してしまいます。また、シンナーなどにも弱く、これを含んだ塗料が付いたりしますと、除光液と同様のトラブルが発生することになります。
酢酸にも影響を受けます
除光液ほど強くはありませんが、酢酸によっても影響を受け、繊維の表面が溶けてシミ状になってしまうことがあります。これは、生地の変質ですから、クリーニングなどで修正することはできません。酢酸を含むものには、酢やマヨネーズ、サラダドレッシングなどがありますので、ご注意ください。
ピーチスキン調のシルク製品は擦れると濃色になります
シルクが擦れると、白っぽくなることはもう常識ですが、最初から白っぽく毛羽立たせたピーチスキン加工製品は、逆に濃色になってしまいます。
繊維を細かく毛羽立たせるピーチスキン加工
桃の実の表面を覆う産毛のように、生地の表面を加工したものがピーチスキン加工です。これは、擦れると繊維が毛羽立ってしまうという絹繊維の性質を利用した加工で、ブルゾンなどに良く見られます。
クリーニングして毛羽立った谷の部分が元の状態です
毛羽立った部分の細かい繊維は擦れると削り取られてしまい、乱反射が消え濃色に見えてきます。また、着用中に皮脂油や大気中の油分が付着することによって毛羽が接着され、全体も乱反射が消えて濃色になります。クリーニングすると、油脂汚れが取れ毛羽立ちが回復すると同時に、擦れて濃色になった部分との差がいっそう際立って全体がムラになってしまったように見えることになります。
スキーウェアに防水スプレー、プリント柄にご注意
スキーシーズン到来。鮮やかなプリントがゲレンデに映えます。この鮮やかなプリントには顔料プリントのものもありますので、スプレーの使用は避けてください。
鮮やかな色彩の顔料プリント
一般衣料は、染料で染められていますが、ペンキのように色の粒子を樹脂で固めたプリントが衣類に使われることがあります。これを顔料プリントといいます。顔料は繊維に染み込む染料と違い、色の粒子そのものが生地の表面を覆ってしまいますから、原色などの鮮やかな発色になります。
スプレーなどに含まれる溶剤で溶ける
顔料プリントは、シンナーのような揮発性の溶剤類で溶いた樹脂が使用されていますので、防水スプレーなどの揮発材によって溶けてしまうことがあります。溶けた顔料はあちこちに着いてしまいますから注意してください。
伸び縮みするストレッチ衣料には寿命があります
数年前から、体にフィットして伸び縮みするストレッチ（伸縮性）衣料がよく売れています。ジーンズやジャケット、ブラウスまでストレッチになっているものもあります。
伸縮は合成樹脂のゴム糸によります
お手元の衣料品を縦方向か横方向に引っ張ってみてください、どちらかの方向に伸び縮みしたらそれが、ストレッチ衣料です。ストレッチ衣料には紳士靴下のゴムと同じようなポリウレタン弾性糸といわれるゴム糸が使われています。
徐々に弾力性がなくなり切れてしまうようになります
ポリウレタン弾性糸は、靴下のゴムのように3～5年くらいたつと、加水分解という現象によって徐々に変質し、弾力性がなくなり、しまいには切れてしまうようになります。クリーニングの洗浄工程やプレス工程で明らかになることも多く、変質した生地は、凸凹に波打つようになります。